NTTデータの生成AI活用事例:1000億円投資と工数削減の展望
サマリー
NTTデータは、2026年までに1000億円をAIや生産性向上に投資する計画を発表しました。その中で、生成AIを活用したシステム開発の工数削減が大きな注目を集めています。製造・テスト工程での活用を中心に進めており、今後は上流工程への展開が期待されます。
企業の基本情報
- 企業名: 株式会社NTTデータグループ
- 証券コード: 9613
- 2023年度売上: 4兆3673億円
- 従業員数: 約193,500人の体制を確立
- 事業内容: 省庁や金融機関を中心とした、NTTグループのSIer。
生成AI活用の背景
2024年2月末に2026年3月までに1000億円ものM&Aに投資することを発表。
2024年売上は4兆6,500億円で営業利益3,430億円で2025年の会社予想は売上4兆4,300億円、営業利益3,360億円。
つまり、年間の営業利益の3分の1を企業買収に利用することになります。
この投資の中には、AI領域も含まれています。
参考: NTTデータ国内投資1000億円の本気度 コンサル再編号砲
生成AI活用の取り組み
現状の実証状況とその対象・目標
NTTデータのIRページより確認できる2024/08/08実施のアナリスト向けのスモールミーティングの質疑応答議事録より確認できます。
2023年度より、システム開発の製造工程、テスト工程にて検証。その結果、優位な場合は40%~70%の工数削減できる試算や結果が出ている。具体的には、Javaのバージョンアッププロジェクトが例としてあげられています。実施中のユースケース数の推移は下記。
- 2023年度: 140
- 2024年度: 200
- 2035年度: 400(予定) →数10億円程度のコスト削減を期待
40億円として400工程と考えると、1工程当たり1000万円。1人月150万円~200万円とすると、5~6人月の削減が可能。
大規模プロジェクトであれば、1サブチームぐらいは削減できるということでしょうか。
開発やテストで削減できるのであれば、再々委託先のソフトウェアハウスが1社なくなる可能性がありますね。
Javaバージョンアップのような、現新一致のようなテスト工程が膨大だと思うので、それが減らせるのは助かります。
リソース不足解決のためのAI活用の具体的な取り組み
その効果は、当社の価格競争力の強化に使う場合もありますし、コスト削減することで、新たな付加価値の提案をして、それを取っていくことで利益を増やすということも考えられます。 ただ、国内におけるリソース不足が非常に深刻な状況下で、リソース不足を解決するソリューションにはなります。また、工数を減らすことで、お客様の予算に余裕が出てくる可能性があります。
コスト削減と付加価値提案は一見同じように聞こえますが、ここではリソース不足の解決を主に指していると考えられます。
コスト削減は、自社の外注コストの削減であり、新たな付加価値の提案をしないと利益が増えないということ。「また、工数を減らす・・・」と同じことを言っているように思えます。どちらかというと「国内におけるリソース不足」の解決策なのだと考えられます。
実際に、利用している工程は製造やテストであって、新たな付加価値提案ができるリソースは不足したままではないでしょうか。
特に、最上流を中心に扱うSIerがやるべき付加価値提案の部分はユースケースに入っていません。
生成AIは様々な活用パターンがありますが、最初に効果が出るのはこの領域だと考えているので、注力して今年取り組んでいます。
この領域=「製造・テスト」だと思います。ChatGPTのAdvanced Data AnalysisやAmazon CodeWhisperer、GitHub Copilotなど、すでに実装されているので、研究開発なしに活用できる資産があるため、効果はすぐに出てきそうです。
「また、工数を減らすことで、お客様の予算に余裕が出てくる可能性があります。」
この文章を読む限り、結局は人月商売からは脱却できず、生成AIを使って外注コストつまり単価を下げて、案件を増やすように読み解けます。
せっかく200億円も投資するので、サービス力の強化やコンサルティングへの積極的な活用が期待されます。
引用元: 事業説明会資料等 - NTTデータ IRライブラリ
結論
NTTデータは、生成AIを活用して工数削減や生産性向上を目指す中、リソース不足の解決に一定の成果を見せています。しかし、人月商売からの脱却には課題が残り、上流工程やコンサルティング領域での活用が次のステップとして期待されます。200億円規模の投資を最大限活かし、より競争力のあるサービス提供を目指すことが重要です。
この記事の著者
R_IT戦略
ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。
また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。
ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。
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