プレミアグループのDX戦略と自動車業界の未来
サマリー
- プレミアグループは自動車に関連する多数の事業を展開
- 自動車がEV化、CASE化という大きな環境変化する中で、周辺事業もそれに合わせる必要がある
- そのための戦略企画として、外部環境を踏まえたDX戦略を立案
- その中期計画は、対投資家だけでなく、ステークホルダー全体にとって良い未来をイメージするのに非常に参考になるものになっています
企業の基本情報
- 企業名: プレミアグループ株式会社
- 証券コード: 7199
- 2023年度売上: 315億円
- 連結対象会社: 連結子会社18社・持分法適用関連会社等5社
- 従業員数: 703人
- 事業内容: ファイナンス事業、故障保証事業、及びオートモビリティサービス事業を中心に、複数のサービスを提供
プレミアグループはカープレミアをはじめとする自動車に関連する複合的なサービスを展開しています。
- ファイナンス事業: 中古車購入向けのマイカーローンを提供し、多様な顧客ニーズに応える。
- 故障保証事業: 自動車購入後の安心を提供するため、故障保証サービスを展開。
- オートモビリティサービス事業: 中古車販売やメンテナンス支援など、車両のライフサイクル全般を支えるサービス。
自動車業界がCASEやMaaSを背景に大きな変革期を迎える中、プレミアグループはDXを通じて事業の変革と新たな価値創出に挑戦しています。
引用: 2024年3月期有価証券報告書
DX戦略資料のまとめ方について
プレミアグループはDX戦略において、広報含めて、力を入れていることがわかります。
次の資料で、DX戦略について詳細にまとめています。
詳細に、スマホアプリ等で現時点できていることとAI活用など未来の話も記載されています。
特に良いと感じた点は2点
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2021-DX戦略からの軌跡として、マイルストーンの振り返り タイムラインの形で、戦略策定の振り返りをして、達成したことを振り返っています。 3年間で8つの大きな取り組みを実行できていることがわかります。
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デジタルガバナンスコードに則り、資料が整理
デジタルガバナンス・コードとは
経済産業省が企業のDXに関する自主的取組を促すため、ビジョンの策定や公表といった経営者に求められる内容をまとめた資料のことです。
2020年11月に初版が発表され、現在は3版になっています。
デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~
上記では、「DX経営による企業価値向上」を目的として、基本的な考え方と望ましい方向性という形で、次の5つの柱を提示しています。
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
- DX戦略の策定
- DX戦略の推進
- 成果指標の設定・DX戦略の見直し
- ステークホルダーとの対話
しかも、プレミアグループのDX戦略では、外部環境を踏まえたうえで、必要なことがもれなくダブりなく記載された資料となっています。
さて、中古車やカーローンなど、まだまだお店や人を介して取引される対象ですが、なぜ、プレミアグループはDXに力をいれるのでしょうか。
DXを強化する事業背景
自動車業界は大きな変革期を迎えています。今までガソリン車が一般的でしたが、環境問題からEV(電気自動車)が普及し始めているタイミングです。
EVの課題は充電時間やバッテリー、価格などまだまだ多いため、売上台数としてはガソリンと電気両方のPHV(プラグインハイブリッド車)に軍配があがります。
しかし、この状態は一過性のものだといわれており、徐々にEVに変わっていくとされています。
その他、自動車の今後のあり方として、上記の資料でも外部環境として、次の2つがあげられています。
- CASE Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化) 車も一つのシステムとして、通信手段をもち、その取得した情報を元に自動運転される。その車は必要なときにシェアされるような時代の到来を表しています。
- MaaS Mobility as a Service。地域住民や旅行者一人一人の移動ニーズに対応して,複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。つまり、車、電車など手段をにかかわらず、移動手段をサービスと捉えることです。
自動車業界はCASEやMaaSの進展により、所有から利用へのパラダイムシフトが進行しています。これに伴い、プレミアグループは従来の自動車所有を前提とした事業モデルから、次世代オートモビリティサービスを創出する必要性に迫られています。
自動車を所有するためにあったマイカーローンや、手放した人と欲しい人をつなぐ中古車販売事業などは徐々に役割は減っていくと考えられます。
こうした背景から、プレミアグループはDXに力を入れていると考えられます。
実際に先の戦略資料のP.6「01-3中期経営計画の重要課題とDX」には、ネットにおける顧客接点や業務効率化のほか、 次世代オートモビリティサービスに対応する新規事業の創出 との記載があります。
自動車に関するビジネスを続けていくためには、既存ビジネスのほか、DXによる新規事業の創出が必要だと考えていると考えられます。
例えば、ネットを活用した顧客接点の強化や業務効率化に加え、将来のCASE/MaaSへの対応として、次世代オートモビリティサービスを創出する取り組みを進めています。
今後の展望
プレミアグループは、自動車業界の変革期において、既存事業の進化と新規事業の創出を目指し、DXを積極的に推進しています。今後も、顧客の利便性を高めるサービスを提供し、業界内での競争優位性を確立していくことが期待されます。
この記事の著者
R_IT戦略
ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。
また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。
ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。
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