すかいらーくの店舗DX事例:配膳ロボットとセルフレジが生む未来のファミレス

DX定着フェーズ 小売

未来のファミレスのイメージ図

サマリー

企業の基本情報

日本全国で、ガストなどの美味しいファミレスを展開するすかいらーくグループ。

2030年に時価総額1兆円に向けて、3か年の中期事業計画を立案しています。

売上、営業利益や店舗数などの定量目標の他にも、DXについての取り組みを行っています。

バーミヤンなどのすかいらーくのお店に行ったことがあれば、セルフレジや配膳ロボットを見たことがあると思います。

どういうロードマップを引いて実現させているのか、そして、今後の展開について説明します。

引用: 2023年12月期有価証券報告書

参考:中期事業計画

すかいらーくのDXロードマップ

中期事業計画を実現するための戦略の一つとして、DXがあります。

次のようなロードマップを引いて、実現しようと取り組んでいます。

  1. 顧客向け・従業員向けDX化促進 2023年〜2025年: 顧客満足度と店舗効率の向上を目指す

    • セルフレジ
    • 入店案内・予約システム
    • テーブル決済
    • 自社ポイントプログラム
    • 呼び出し掲示板
    • 宅配代行連携強化
  2. バリューチェーンを通した革新的生産性向上 2024年〜2026年: バックオフィス業務の高度化

    • 店舗バックオフィス業務の高度化・効率化
    • MDCシステムの高度化(AI・ロボット活用加速化)
    • 従業員コミュニケーションのユニバーサル化・従業員支援強化

    ※MDCシステム:マーチャンダイジングセンターのことで、食材の下準備やソースなどを集約して調理するセントラルキッチンと物流拠点

  3. グローバルIT基盤の再構築 2025年〜2027年 : グローバル展開

    • グローバル・ローカルで活用可能な基幹システム再構築
    • 現地IT企業との提携(M&Aや海外展開のスピードアップ)
  4. 革新的なサービスの創造 2028年〜 : 新規ビジネスの展開

    • 自社の枠を超えた社会課題の解決
    • パートナーとの協業や産業を超えた連携によるデータ活用

ロードマップからわかるDX推進の考え方

1のロードマップに関しては、顧客の視点から見て実現できているとわかります。

2のバリューチェーンに関しては、外からではわかりにくい箇所かもしれません。

3,4に関しても、日本の一人の客としては、わからない部分になります。

このロードマップから、お客様や従業員に近いところ、つまり、成果が見えやすい部分から取り組むことで、DXを推進したいことがわかります。

DXは中長期的な取り組みのため、最初に成果を出すことで組織にDXの意識をもたせていると考えられます。

飲食業界の外部環境によるDXの必要性

更に、飲食業界にとって大きな課題である、最低賃金引き上げと人材不足も理由の一つだと考えられます。

調理もホールもどちらもアルバイトやパートが担う割合が高い業界です。

そのため、最低賃金引き上げにより時給があがること、人材不足により採用広告費の高まりは原価高騰に直結してしまいます。

また、それに並行して、円安やインフレによる原材料費の高騰。

値上げ以上に原価があがる要因が多く、デジタル活用による効率化が求められている業種といえます。

参考: 新しい外食体験による顧客満足度追求と働き方の改革

参考: すかいらーくの「おいしい」を生み出すMDC(マーチャンダイジングセンター)の取り組みを一挙にご紹介!

実際の効果とDX人材

上記の中期事業計画の資料内に次の3つの効果が記載されています。こういった、定量的な効果測定は必要です。

セルフレジの効果はかなり大きいです。

まだまだ、テーブルの別会計ができなかったり、グルメ券等はスタッフのみですが、QRコード決済の拡大に伴いセルフレジで対応がしやすくなりました。

現金を扱いが減ることで、ミスも減らせるので、良いこと尽くめです。

また、クレーム件数が減ることはお客様満足度だけでなく、従業員満足度の観点からも良いことです。

カスハラ(カスタマーハラスメント)が社会問題になるなか、そのきっかけを減少させていることは素晴らしいです。

その他、ネコ型配膳ロボットは2,100店舗に3,000台導入されているようです。

店舗のサイズや導線によって、導入の難易度が異なるため、全店舗は難しいと考えられますが、多くの店舗に入っています。

人が持ち運ばないだけでも効率化が実現できると思うので、定量的な効果が知りたいですね。

全社DX推進プロジェクト

2022年にDX推進のプロジェクトを発足させたあと、本社の全部署にDX専任担当を配置しているようです。

飲食業界は生産性が低くなる傾向があるため、本社は少ない人数と思われますが、専任を置き、現場からのアイデアを取り入れる仕組みを構築しています。

すかいらーくグループのDX推進の本気度が伝わります。

DXに力を入れて、成果を出している企業の特徴として、 全社の取り組み にしていることがあります。

参考: 双日株式会社のDX人材育成KPI

やはり、システム部門、DX部門だけが動くのではなく、組織として、DXのビジョンが浸透していることが大事だとわかります。

実際に、すかいらーくでは、2023年には、 7,430時間の業務改善と13,300万円のコスト削減 を達成しています。

まとめ

すかいらーくグループは、店舗運営からバリューチェーン全体にわたるDXを推進し、顧客満足度と業務効率化を両立する成功事例を示しました。

今後も、グローバル展開や新たなサービスの創造を通じて、業界全体のDXを牽引していくことが期待されます。

この記事の著者

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R_IT戦略

ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。

また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。

ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。

@R_IT_strategic

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