ダイキン工業株式会社の社会変革を実現したDX事例
サマリー
- エアコン製造の世界首位のダイキンが発展途上国に向け、エアコンのサブスクリプション型サービスを展開
- 高額な買い切りモデルから、時間単位の利用料金モデルに転換することで安価に利用可能なビジネス創出
- DXの実践例として、社会変革を実現
企業の基本情報
- 企業名: ダイキン工業株式会社
- 証券コード: 6367
- 2023年度売上: 4.4兆円
- 従業員数: 98,162人
- 事業内容: 世界首位の家庭用・事業用エアコンをはじめとする空調・冷凍機事業とフッ素製品の化学事業。
売上の8割近くが海外売上であり、グローバル企業です。なかでも米国が25%以上となっています。
引用: 2024年3月期有価証券報告書
ダイキンの発展途上国への展開
2021年に開始されたダイキンのCM。
アフリカ大陸にあるタンザニア連合共和国では、赤道近くであり高温多湿の熱帯気候で、厳しい雨季もあります。
そのため、一年中冷房が必要な地域ですが、発展途上国のため、家庭においてエアコンを導入することが難しい状況です。
そこで、ダイキンはサブスクリプション(定額利用料金)でエアコンを提供することで、タンザニアでもエアコンを導入することができました。
CMでは、省エネによる環境負荷軽減やサステナブル、社会課題の解決として広報していますが、DXの取り組みの一つだと位置づけられると考えられます。
理由としては、次の3点。
- 対象顧客とビジネスモデルを変えることで、市場を切り開いた
- IoTや位置情報など活用によるデータ利活用
- 社会変革を成し遂げる取り組み
1. 対象顧客とビジネスモデルを変えることで、市場を切り開いた
日本企業でアメリカが売上の25%ということは、先進国を中心としたビジネス展開をしていると考えられます。
また、家庭用エアコンは基本的に買い切りであり、設置やメンテナンスは購入先から指定されたエアコン工事会社が請け負うことが多いです。
それを、発展途上国であるタンザニアを対象にして、買い切りからメンテナンスを含めたサブスクリプションサービスに転換することになりました。
発展途上国の各家庭にとって、エアコンを購入するのは大きな出費ですが、時間単位の利用料とすることで支払いやすくしました。
そうすることで、タンザニアの人々にエアコンの空気を届けることができるようになりました。
- 対象顧客: 先進国 → 発展途上国
- ビジネスモデル: 買い切り → サブスク
DXの本質は、「データとデジタル技術を活用し、既存ビジネスモデルの深化や業務変革・新規ビジネスモデルの創出を行う取組です。」
既存ビジネスであるエアコンの製造販売を深化させ、「涼しい空気を届ける」という本質にたどり着き、そこからサブスクリプション型のビジネスを創出することに成功しました。
参考: DXの本質
2. IoTや位置情報など活用によるデータ利活用
ただ単に、エアコンをレンタルするだけでは、リスクがあります。
- 正しく使われるか
- 盗難等が起きないか
これらを防ぐためには利用状況や位置情報の監視・モニタリングが必要になります。
今までのエアコンにIoTのようなものを設置して、ダイキンも顧客も確認できるようにする必要があります。
IoTといったデータ利活用があってこそのビジネス創出といえます。
3. 社会変革を成し遂げる取り組み
熱帯地域にはマラリアやデング熱などの感染原因である蚊が飛んでいるため、窓を開けておくべきではありません。
しかし、熱がこもるので、窓をあけないと熱中症になるリスクもあります。
窓を閉めて涼しい空気届けられることで感染症を防ぐことができます。
感染症でなくなる人が減らすことができれば、大きな社会変革と言えます。
参考:デジタルオプティマイゼーションとデジタルトランスフォーメーションの違い
この記事の著者
R_IT戦略
ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。
また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。
ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。
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