日本瓦斯株式会社のDX取り組み事例:競争力強化に向けた施策

DX定着フェーズ 小売業

サマリー

企業の基本情報

参考: 2023年度有価証券報告書

事業環境と中長期的な転換

エネルギー小売の事業環境

エネルギー自由化により、価格やサービス面での競争が激化しています。特に、通信業界や新規参入者の動きが市場に大きな変化をもたらしています。

このような競争環境の中、ニチガスは従来の価格競争に頼らず、DXを通じた効率化や付加価値の提供によって差別化を図り、競争力を強化しています。

ニチガスの中長期的な転換

ニチガスは、そうした事業環境からの脱却を目論見、プラットフォーム事業への転換を目指しています。

小売のオペレーション最適化を行い、その仕組を他社に提供する。今までは競合であった企業に対して、最適オペレーションを提供することで収益を上げようとしています。

具体的には、

これらの実現にはデジタル化、つまりDXの必要性が非常に高いと考えています。

参考: ニチガス~Growth Story~

DXの推進の実現

ニチガスの目指す姿

競争から共創へ。新たな形で地域社会へ貢献する

小売業からプラットフォーマーになることを意図しています。

ニチガスが目指すのは、各社が個性を活かしつつ、システムなど裏側の仕組みを必要に応じて共有・共同利用することで、より効率的にお客さまにエネルギーを供給できる世界です。

これらを実現するために次のような取り組みを行っています。

実現した取り組み

1. デポステーション「夢の絆・川崎」

2. スペース蛍

3. 雲の宇宙船

4. マイニチガス

5. タノミマスター

6. ニチガスサーチ

7. データ連携基盤(ニチガスストリーム・道の駅・ニチガスツインonDL)

参考: ニチガス DXの取り組みで目指すストーリー

ポイント

DX推進の副次効果

一般的に投資家は、中長期的な企業成長を期待して企業に投資を行います。そのため、競争が激しく、価格競争になる市場の企業への投資は避けがちです。

ニチガスでは、投資家向け広報の中でもDXにページを割き、事業変革をアピールしています。

参考: ニチガス会社案内

会社案内の34ページの内、半分の17ページにおいてプラットフォーム事業をDXの文脈で説明しています。

会社案内のため、営業活動や採用活動等でも使用されていると思いますが、その重要な案内の半分を使っているため、本気度が高いことがわかります。

注目すべきは、「DX実装への課題」として、今後の取組について実情をあげています。 例えば、「基幹システムの再構築に対する覚悟」は、いわゆる2025年の崖の問題のことで、レガシーシステムの刷新について取り組むということがわかります。

DXの重要な点である「コンサルに判断を丸投げする担当責任者の怠慢」や「技術ドメインとビジネスドメインをマッチングさせる人材」についても書かれています。

補足:残念なこと

「世界の優秀なITパートナーの確保条件」のところですが、少し誤植があり、まだまだ技術の文言をレビューできる人が少ないのではと感じてしまいました。

その他、伝わりにくい部分があり、勿体ない感じを受けました。

この記事の著者

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R_IT戦略

ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。

また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。

ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。

@R_IT_strategic

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