トラスコ中山株式会社のDX:業界全体を巻き込むビジネス変革とデジタル基盤構築

DX定着フェーズ 卸売業

サマリー

企業の基本情報

モノづくりの現場において、「必要な時に」、「必要なモノを」、「必要なだけ」調達することが大事です。

それを間接資材において支えているのが、トラスコ中山です。

卸売業であるため、需要予測や即納が可能な物流、BtoBの取引に必要な見積もり、発注機能などを広くカバーする必要があります。

工場用副資材は多品種少量の需要が多く、在庫管理や配送効率化が求められます。こうした業務の複雑さを解消するため、トラスコ中山ではデジタル技術を活用しています。

引用: 2024年3月期有価証券報告書

トラスコ中山の経営目標

有価証券報告書より、トラスト中山の経営目標=ありたい姿を確認することができます。

<ありたい姿(能力目標)>
①2030年までに在庫100万アイテムを保有できる企業になりたい。
②1日24時間受注、1年365日出荷できる企業になりたい。
③欠品、誤受注、誤出荷のない企業になりたい。
④棚卸作業のない企業になりたい。
⑤問屋をあってもユーザー様直送出荷をストレスなくできる企業になりたい。
⑥お見積りに瞬時にお応えできる企業になりたい。
⑦業界「最速」「最短」「最良」の納品を実現できる企業になりたい。
⑧可能な限り環境負担の小さい企業になりたい。
⑨リサイクル、リユース、リターナブルにも積極的な企業になりたい。
⑩日本のモノづくりを支えるプラットフォーマーになりたい。
⑪業界の常識、習慣、定説、定石を塗り替えることのできる企業になりたい。

どれも人的なアナログ作業では実現ができず、デジタルが関わることがわかります。

特に、10番のプラットフォーマーになる部分ですが、従来の卸業を超えた顧客体験の改善なので、DXの本丸と言えます。

その他にも、2番の24時間365日出荷や5番の直送出荷、8番の最速・最短・最良の納品など、デジタル化したうえでオペレーションの最適化が必要になります。

されらに、3番の欠品や誤出荷のない企業を実現するためには、在庫データのリアルタイム管理と物流の自動化が不可欠です。こうした目標の達成にDXが果たす役割は極めて大きいと言えます。

基幹業務において、デジタル化を達成したことについて、トラスト中山はWebサイトで公開しています。

トラスコ中山の商材と業務フロー

卸売業の大きなビジネスフローは次のようになります。

  1. 仕入れ・契約時: メーカーとの交渉。商品選定。
  2. 在庫管理: 在庫調整(欠品や過多にならないように)
  3. 注文管理: 販売店の注文への対応。
  4. 配送: 配送管理(コスト、納期、品質)
  5. アフターサービス: 返品やクレーム対応

DX以前と以後の変化

  1. 仕入れ・契約時

このポラリオというシステム(ポータルサイト)を使うことで、メーカーへの仕入れに係る各種業務をペーパーレス化したこと、 さらに、販売店への情報提供がリアルタイムに可能になりました。

今後は、業界全体のデータ基盤としてのプラットフォーム開発を進めています。

自社だけでなく、業界全体で顧客体験を変革する

  1. 在庫管理
  2. 注文管理

工具や消耗品といったプロツールが必要なユーザーが実際の購買業務を行います。

ユーザーは発注作業やどの商品が必要か、社内の購買申請など様々なことを実施してから注文が入ります。

そのエンドユーザーの課題の解決をすることと、データ収集による需要予測を可能にしました。

オレンジコマースの導入により、トラスコ中山の在庫管理では、倉庫内の在庫状況をリアルタイムで可視化し、欠品や過剰在庫を防止が可能になっていると思われます。

そして、AIを活用した需要予測により、在庫の最適化を実現が可能となります。

  1. 配送

MROストッカーは、消耗品を現場に先行配置し、必要なときにアプリで発注することで、物流のリードタイムを短縮し、在庫コストを削減します。

トヨタの生産マネジメントシステムであるTPM(Total Productive Maintenance)で採用されているJust in Timeを実現する仕組みです。

Just in Timeとは「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」を実現する仕組みです。

消耗品のように買い置きしておくのを忘れても、在庫を持ちすぎるようなことがないのは、現場で働く人にも、経理にとってもありがたいことです。

  1. アフターサービス

コミュニケーションツールだけだと、LINE WORKSやSlackなどありますが、自社で作ることですべてのデータを見ることができることは今後の強みになると思われます。

特に、注文した商品情報を確認しているタイミングやどういった情報をやり取りしているか、顧客体験を改善するきっかけになるデータだと思われます。

まだまだアナログな取引先が多いと考えられますので、大手が主導して進めることは業界にとってもプラスに働くと思われます。

今後、T-Rateを通じて収集した顧客の購買行動データや問い合わせ内容を分析することで、さらに顧客体験を向上させる施策が期待されます。

引用: トラスコ中山 デジタル戦略

まとめ

トラスコ中山は、単なる業務効率化にとどまらず、業界全体の業務最適化を目指してDXを推進しています。今後は、データ基盤を活用した新たな価値提供や、プラットフォーマーとしての地位確立が期待されます。

この記事の著者

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R_IT戦略

ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。

また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。

ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。

@R_IT_strategic

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