アジャイルとは?本来の意味とよくある誤解
アジャイル開発とは何?シンプルにわかりやすく解説
アジャイル開発とは、ソフトウェアやプロジェクトを短いサイクルで反復的に進めていく開発手法です。「アジャイル(Agile)」という言葉は「俊敏な」「柔軟な」という意味を持ち、その名の通り、顧客のニーズや状況の変化に迅速に対応することを目的としています。
従来のウォーターフォール開発(計画から完成までを一度に進める手法)とは異なり、アジャイル開発では小さな単位で計画・実行・改善を繰り返しながら進めるため、以下のような特徴があります。
- 顧客のフィードバックを頻繁に取り入れる
- リスクを小さい段階で発見・解消できる
- 柔軟に計画を変更できる
対になる概念: ウォーターフォール開発とは?
ウォーターフォール開発は、要件定義から設計、実装、テスト、運用までの工程を一方向に進める開発手法で、計画が明確な反面、柔軟性に欠けるという特徴があります。
大規模な開発で用いられることが多い手法ですが、市場にリリースしたタイミングが遅く、顧客ニーズが変わってしまって、使われないシステムになるようなことがあります。
ウォーターフォール開発では、全ての要件が最初に決まるため、変更が難しく、リリース時には要件が時代遅れになるリスクがあります。一方、アジャイル開発は小さな単位で進めるため、リリースごとに顧客の最新ニーズを反映できます。
アジャイル開発のルーツは日本?意外な原点を解説
アジャイル開発の起源には、日本の製造業で生まれた「リーン生産方式」が深く関係しています。特にトヨタが提唱した「トヨタ生産方式(Just-In-Time)」がアジャイルの精神に影響を与えています。
トヨタ生産方式は、以下のような考え方に基づいています。
- 必要なものを、必要なときに、必要な分だけ作る(効率性の重視)
- 継続的な改善(Kaizen)
これらの考え方が、1990年代にアメリカのソフトウェア開発者たちに取り入れられ、現在のアジャイル開発手法が誕生しました。
そして、アジャイルソフトウェア開発宣言として、まとめられています。
アジャイルソフトウェア開発宣言とは
2001年、IT開発のエキスパート17名がまとめた、開発手法や価値観についての文章です。
プロセスやツールよりも個人と対話を、 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 契約交渉よりも顧客との協調を、 計画に従うことよりも変化への対応を、
価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを 認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。
仕様書や設計書といった文章ではなく、動く使えるソフトウエアを早くに市場に投下し、顧客のフィードバックを得て、改善していくことを価値とした開発手法であることがわかります。
引用: アジャイルソフトウェア開発宣言
アジャイル開発のよくある誤解
アジャイル開発は「安くできる」は本当?
誤解: アジャイル開発はコスト削減に繋がる 真実: 必ずしも安くなるわけではありません
アジャイル開発では、頻繁なフィードバックや調整が必要になるため、場合によっては手間や工数が増えることもあります。しかし、最終的に顧客のニーズに合った製品を提供できるため、無駄なコストを抑えることができる点は大きな利点です。
アジャイル開発は「必ず成功する」または「必ず失敗する」という誤解
誤解: アジャイル開発は万能で、成功を保証する。 真実: 成功には適切な運用が不可欠です。
アジャイル開発が有効であるかどうかは、プロジェクトの特性やチームの成熟度に大きく依存します。また、アジャイルは「進め方のフレームワーク」であり、適切に実践しなければ期待通りの成果は得られません。
アジャイル開発は「難しい」という先入観
誤解: アジャイル開発は非エンジニアには理解が難しい。 真実: 基本的な概念はシンプルで、むしろ非エンジニアが関わりやすい仕組みです。
アジャイルの核心は「小さく計画し、改善を繰り返す」というシンプルな考え方です。特に、プロダクトオーナー(顧客代表)の役割は非エンジニアでも務められるため、エンジニアリングの知識がなくてもチームの重要な一員になれます。
特に、ユーザーの立場で参加をすることでエンジニアが議論するよりも、本当に求めているものに気づくこともできます。
アジャイル開発の進め方:非エンジニアでもわかる基本の流れ
アジャイル開発は以下のようなサイクルで進められます。
- 計画(Planning): チームでタスクを整理し、優先順位を決定。
- 実行(Execution): 短い期間(スプリントと呼ばれる)でタスクを実行。
- レビュー(Review): 作成した成果物をチームや顧客と確認。
- 振り返り(Retrospective): 成功した点や改善点を洗い出し、次のサイクルに活かす。
非エンジニアがアジャイル開発にどう関わるのか?
非エンジニアは以下の役割でアジャイル開発に参加することがあります。
- プロダクトオーナー: 顧客の立場からプロジェクトの方向性を示す。
- ステークホルダー: 提案や意見を通じてプロジェクトをサポート。
- チームメンバー: 非技術的なタスク(調査、資料作成など)を担当。
開発はエンジニアだけのものではなく、ユーザーの立場として必要とされるものを考えていくことが大切です。
まとめ
アジャイル開発は、柔軟性と迅速性を兼ね備えた開発手法であり、非エンジニアでもその基本を理解し、チームの一員として参加することが可能です。特に、「小さく試し、改善する」という考え方は、ソフトウェア開発だけでなく、日々の業務改善にも応用できます。
最初の一歩: 小規模なプロジェクトやタスクで、アジャイル的な進め方を試してみることから始めてみましょう。
この記事の著者
R_IT戦略
ITストラテジストとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています。政府系金融機関の勘定系システム再構築プロジェクトでは、複数チームの連携を強化し、設計と運用を主導。事業会社のマルチベンダー体制によるシステム開発では、プロジェクトマネージャーとして現場の課題解決を支援しました。
また、RPAやSaaSを活用した業務変革にも取り組み、業務プロセスの効率化や部門間の連携強化を実現。
ITストラテジスト協会(JISTA)正会員として活動しています。このサイトやXで、DXやIT戦略に関する情報を発信中です。
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